《宮代理事のQ&Aコーナー #8》勉強もスポーツも出来が良くない息子。心配です。焦ります。
本日のご質問です↓
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うちの子は周りの子に比べて、勉強ができません。スポーツでもレギュラーになれないので、心配ですし、焦るような気持ちがあります。
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【宮代理事より】
子育ては大変ですよね。そして、自分の子どものことは、いろいろな角度から心配になるものだと思います。
まず、お子さんが生まれた時のことを思い出してみましょう。我が家は、もう25年以上も前のことになりますが、今でも良く覚えています。生まれた瞬間の安堵と喜び。そして、とにかくかわいい姿。お母様の場合、出産の大変なこと、授乳での睡眠不足、最近は産後鬱などということも言われていますから、喜びばかりではなかったと思いますが、それでも、すやすやと眠っている姿を見ると、やはり「可愛い!」と思ったのではないでしょうか。
そして、寝返りを打つ、這い這いする、お座り、つかまり立ち、子どもが見せてくれる変化に、いちいち感動と嬉しさを感じていましたよね。ふらふらと一歩目を踏み出し、遂に歩き始めたこと、「ママ!」と言葉を発した瞬間のこと、一生忘れることはできないと思います。
公園デビューした時、保育園、幼稚園に通い始めた頃は、どんなことを感じていましたか?この頃から、「うん、やっぱり家の子が一番可愛いなぁ」とか、「お遊戯は負けない」などと感じることがたまにあっても、口に出したりはせずに心の中にしまっておいたものですね。そして、学校に通い始めると、成績表をもらって来て、「むむ、大丈夫かな?」とか、「もっと頑張らないとダメだ」と思い始め、勉強を強いたり、生活態度について叱ったりするようにならざるを得ない状況を迎えたかもしれません。
なぜ、心配したり、焦ったりするのでしょうか?
勉強ができない、レギュラーになれないとは、その瞬間に一緒にいる周囲の子ども達と比較をして、その優劣を理由に心配や焦りを感じているのです。ある集団やチームの中でトップの子どもは一人しかいません。
比較をする時に、どの程度のレベルに位置していれば「安心」なのでしょうか?その安心を感じるのは、子ども本人ではなく、どうやら親の方のようですね。親は、自分が安心を手に入れようとして子どもを叱咤しているのです。
チームを預かっている指導者は、複数の選手たちで構成される組織をいかに良くするかを考えます。個々の選手の実力を伸ばし、さらに選手たちの関係性を良くしてより良いチームとすることを目指します。
その際、複数の選手たちを目の前にして気を付けるべき大変大切なことがあります。「縦比較」と「横比較」という対立する思考があることを自覚することです。「横比較」とは、ある瞬間で時間を止めて、選手たちを一列に並べて比較することです。「縦比較」とは、それぞれの選手に注目し、時間の経過の中で変化と成長を比較することです。どちらの見方が選手たちを伸ばすことができるでしょうか?
スポーツの世界だけでなく、学校の活動においても、子ども達は自然と競争をしたがります。放っておいても、自分たちで互いの優劣をつけるものです。この優劣に刺激を受けて、例えばライバル心が芽生え頑張る活力を生み出すかもしれません。でも、これはあくまで自主的に生まれてくるものであって、指導者が「横比較」を優先して、その評価を子ども達に押し付けたら、単にプレッシャーを増長し、やる気を削ぐことにしかなりません。
「なんでみんなと同じようにできないんだ!」
「そんな練習では、みんなにおいていかれてしまうぞ!」
といった言葉は叱咤激励のつもりで繰り出しているかもしれませんが、子ども達の心に突き刺さり、悲しい気持ちにさせ、追い込んでいく効果しかないと考えています。
指導者も親も、本当に目指すこと、望んでいることは、一人一人の子どもが立派に成長していくことではないでしょうか?ふと気が付くと「横比較」ばかりが気になり、自分が不安になってしまい、子どものためと言いながら、実は、自分が安心を手に入れようと思っていませんか?「縦比較」こそ人を成長させる言葉を生み出す考え方なのです。
「昨日できていなかったのに、今日はできるようになったな。」
「コツコツ積み重ねて努力しているのが良く分かるから、今の結果に左右されることなく、これからも続けて行こう!きっと、徐々に良くなっていくよ。」
といった言葉を紡ぎお子さんにプレゼントしてあげてください。赤ちゃんの時、一つ一つできることが増えたことを、心から喜んだ日々。正に「縦比較」が習慣になっていた日のことを思い出してみてください。